順真掌編集 - 01

▥ 縦書きで読む

虚構の過日

 真暗な輝きの二つの色が、少年を憂き世から切り離す。
 ふとした仕草で、ふわりと揺れ広がる銀の幕。
 欲しかった台詞ことば。アドリブの誑誘ほほえみ
 怖れの結実は、どこか少年の好きな空間に似ていた。

Theme - 果実と映画館

聖餐への礼讃は凄惨なりて

 話はうつろう。少年と呪い、ふたりの傍を流れる水のように。
「それでさ、順平」
 何時ぞやの本の数行の記憶を、呪いは朗々と語った。
「そいつが書くには『悲哀や苦難、屈辱や悔恨、憎悪や恐怖の無い人生は味気ない』らしいんだ」
「じゃあ、真人さんは」
「そう」
 少年が敢えて紡ぎきらなかった言葉は、呪いが紡がせなかった言葉でもある。
 正解であり、不正解であり、未知にして無知の不可解。
「俺は最高の美味かもしれないね」
 終わりを知らない少年と、終わりを知る呪いの話。
 やがて時は夏の残り火を餐とし秋へとうつろい、惨憺たる美味で礼讃の皿を満たし逝くだろう。

Jan 2023 - 修正 / 改稿