虚構の過日
真暗な輝きの二つの色が、少年を憂き世から切り離す。
ふとした仕草で、ふわりと揺れ広がる銀の幕。
欲しかった台詞。アドリブの誑誘。
怖れの結実は、どこか少年の好きな空間に似ていた。
聖餐への礼讃は凄惨なりて
話はうつろう。少年と呪い、ふたりの傍を流れる水のように。
「それでさ、順平」
何時ぞやの本の数行の記憶を、呪いは朗々と語った。
「そいつが書くには『悲哀や苦難、屈辱や悔恨、憎悪や恐怖の無い人生は味気ない』らしいんだ」
「じゃあ、真人さんは」
「そう」
少年が敢えて紡ぎきらなかった言葉は、呪いが紡がせなかった言葉でもある。
正解であり、不正解であり、未知にして無知の不可解。
「俺は最高の美味かもしれないね」
終わりを知らない少年と、終わりを知る呪いの話。
やがて時は夏の残り火を餐とし秋へとうつろい、惨憺たる美味で礼讃の皿を満たし逝くだろう。