銀色に光る夏がくる

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 薄曇りの空が淡く眩しい。
 梅雨空の名残りを破ろうと、太陽が躍起になっている。
 薄曇りの空に似た色が眩しい。
 近道の裏通りで見かけるようになった、男と女の髪の色。

 多分、兄妹。多分、姉弟。そしてきっと、双子なのだ。
 同じ髪型に揃いの服。同じ表情で雲を眺めて追いかける。
 魔法で魂でも分けたかのように。
 魔法でひとりが化けたかのように。
 ふたりが、あまりにも似ていたものだから。


 雲が流れていく。
 今日は女の方がいて、女は雲を見上げなかった。
 雲が千切れていく。
 空に向ける幼い憧れは、そこになかった。
 体が千切れていく。
 閉じられなかった瞳が最期に映すもの。
 青空の下、ひとりぶんの影。