――私の、可能性の始まりの日。
散々打たれて斬り裂かれた魂に、ニアデスハピネスの残滓。
成長の勲章にまみれた姿で呪術師どもに手を振って、私は優雅に別れの挨拶をしてみせる。
誑かし、堕とし、復讐に狂わせた馬鹿な人間をくっつけて。
「まひと、さ……なんで……」
馬鹿な人間――順平――を地面に放り出した。
バウンドして、転がって、痛みに咳込みながら私に問い掛けてくる。
代謝を見るまでもなく解るよ。何で僕を生かしたの、でしょ?
「違う真人を生きてみたくなったから。そこに、順平っていうパーツが必要だと思っただけ」
魂の形を変えて宿儺の器にぶつけてもよかったし、気が変わる瞬間まではそのつもりだった。
順平が生きていたって、いつ死んだって、私の終わりは決まってる。
なのに、可能性の閃きの眩しさに、私の魂は抗えなかったんだ。
だって、物語は決まった終わりまで敷かれているけれど、その上でどう走るかは自由じゃない?
「だから私ね――」
さあ、観測を始めよう。
可能性の先の満天の、自由に散らばる可能性。
そこから降り注ぐ閃き一つを、この掌に受け取るために。